今、もしあなたが学習塾を開業する予定だとしたら、その前にぜひこのコラムを読んでほしいと思いながら書いています。
独立を考えている方の最大の関心ごとは、必要な資格と開業資金、そして開業後の年収の見通しではないでしょうか?学習塾フランチャイズを検討している方であれば、自分の資格・資金で開業可能なのか、そして、開業後の経済状態は安定するのかなど、いくつもの不安や疑問が浮かぶはずです。
この部分の不安が解消しない限り、独立に踏み切るのはむずかしいものがあります。今回は学習塾開業に必要な資格と資金、予想される収入に関して解説しますので、ぜひ参考にしてください。
塾開業のために必要な資格や資金とは?
まずは、学習塾の開業に必要な資格と資金に関して確認しましょう。
資格は必要なし
学習塾の起業・経営に、教員免許のような資格、生徒への指導経験などは必要ありません。大学卒業資格もなくて大丈夫です。個人事業の開業届を税務署へ申請すればOK。ただし、教育者として、教育に対してしっかりとしたビジョンを持っていることは求められます。ビジョンがない学習塾経営者の下には、生徒・保護者はもちろん、優秀な講師も集まりにくいでしょう。
学習塾を開業した場合の年収は?
学習塾オーナーの年収は、経営の規模によって大きく変動します。一般的には500万円前後だと言われています。ただし、学習塾オーナーの中には、複数の学習塾を経営して年収1,000万円超の方も存在します。どのような学習塾をどの程度の規模で展開するかで、年収にはかなりの差があります。
学習塾の開業に必要な資金
塾の開業資金の内容は多岐にわたります。机やOA機器などの備品・広告宣伝費・運営費用(物件賃貸料・水道光熱費・講師給与など)に加え、学習塾フランチャイズなら加盟金も必要です。こちらも、学習塾の規模・立地次第で金額は大きく変わります。
開業のための準備とは?
開業し、学習塾を運営するためには具体的に以下の準備が必要です。
コンセプトの決定
どのような生徒を対象に、何を目的にどのように指導する学習塾なのかを決めます。
開業する場所の選定
開業するエリアに関して、事前に計画を練ります。小学校・中学校の徒歩圏であれば子どもたちは通いやすいでしょう。都心は公共交通機関の路線・便数が充実しているので、駅・停留所から近い場所がおすすめです。地方は車による保護者の送迎の利便性も考慮に入れ、駐車場の有無もチェックしましょう。
また、周囲の競合塾の立地状況、生徒の集まり具合、講師の確保しやすさなども、立地に関して考えるときに重要な検討項目になります。
収益・支出のシミュレーション
収入・支出を予測して収益をシミュレーションします。学習塾経営の収益を予測する際は、以下の観点で生徒と講師に関してしっかり考慮することが必要です。
<講師に関して>
学習塾は、主に受験指導をする「進学塾」と学校の授業のフォローを行う「補習塾」に分かれます。補習塾の場合、大学生又は、大学生と同等の学力がある人材でも講師としての指導が可能なので、他の形態の塾に比較して講師確保はそうむずかしくはありません。
進学塾の場合であれば、受験の結果を求められるので、講師にも受験で結果を出せるスキル・経験が必要になります。そのような講師の確保には、かなりの労力と支出が必要です。
<生徒に関して>
学習塾経営において生徒数の確保は大きな課題。個別指導の場合、料金設定は集団指導よりも高くできるので、少ない生徒数でも収入が確保しやすいメリットがあります。また、運営に広いスペースが必要ないので、物件賃貸料・水道光熱費などの支出を抑えることが可能です。
学習塾を開業するまでのプロセス
次に、学習塾を開業するまでのプロセスについて紹介します。
1.FC加盟本部への問い合わせ・選定
資料請求・問い合わせはもちろん、説明会にも参加しましょう。情報収集のうえで比較検討し、決定します。
2.開業資金の準備
開業資金を算出し、資金を準備します。全額用意できなくても、金融機関から融資を受けて開業することが可能です。本部から見積もり作成・融資のアドバイスのサポートを受けられる場合もあります。
3.加盟契約、オーナー研修
フランチャイズ加盟に関し、契約内容を確認し契約を締結します。オーナー研修に参加、経営者としての準備の始まりです。
4.教室の物件選定、看板や備品の設置・搬入、教材の準備
物件が決まったら内外装工事がスタート。デスクなど教室運営に必要な備品の搬入も始まります。教材の手配も進めましょう。
5.講師確保
開校までに求人広告などで講師を募り、育成します。
6.生徒集め
場所や特徴・料金が記載されたWebサイトの作成、SNSでの発信、チラシや説明会、季節キャンペーンなどで生徒を集めます。
学習塾を開業するときにハマってしまう3つの罠
罠①大手塾の真似をしてミニチュア大手になる
大手塾の真似をしても大手塾には勝てない
よくあるのが、大手塾出身の先生が独立し、かつて自分が務めていた塾と同じような塾を作ってしまうというパターンです。
これは自分自身がその塾で成功していたために陥ってしまう考えなのですが、大きな見落としをしています。
それは自分が務めていた塾は自分以外の多くの人間によって成立していたということです。また、その塾が長年、その地で築き上げていたブランドがあって集客だったということも忘れがちです。
それを忘れて自分だったらできると妄信して同じような塾を作っても、保護者は実績のない塾に同じ月謝を払うくらいなら、実績のある大手塾を選びます。それが残酷な現実です。
教えられない教科は動画授業にしても無駄
また、数多くの講師を雇えない場合、動画授業でその穴を埋めようとする先生も多いのですが、多くの場合は失敗します。動画で成功しているパターンは生徒の面倒見の良い塾です。
講師の数が足りずに動画を入れてもほとんどはそのまま放置しているだけのことが多く、結局は質問に答えることができるスタッフがいるところが強いわけです。
最近は低価格で質の高い動画も自宅で受講できるようになりました。
これだけ動画コンテンツが増えてくると、動画そのものに価値を感じることは少なく、現在も大手予備校の有名な講師が出ている映像授業が一人勝ちの状況を見ても、動画をメインにするタイプの塾は今後苦しくなると予想されます。特に全く教えた経験のない方が動画メインの塾で起業して大失敗をしているケースがよく見られます。
どうしても動画を入れるなら、自分が教えられる教科に限定して、質問を無制限に受ける形がおすすめです。
自分の最大の強みをさらに強化して差別化する
大手塾の真似をしても、知名度と資本で劣っている後発組、しかも規模の小さい塾は勝てません。そうではなく、むしろ大手塾とは真逆の路線で行くことをおすすめします。それが自分の強みを活かした形に出来れば一人勝ちできるようになります。
今、大手塾に通っている生徒・保護者が持っている不満を調べてみると良いアイデアが浮かぶかもしれません。私自身はその答えを見つけています。知りたい方はぜひ個別面談でお話ししましょう。
罠②大手塾が少ない田舎で開業してしまう
郊外で開業したある塾の悲劇
その塾は大学生がスタートさせた塾で、大手塾がひしめく激戦区である都市部を避けて、ある程度生徒が見込める郊外で開校しました。
どうなったかというと、開校当初はそこそこ集まったものの、それ以降は年々苦しくなり、3年も立たずに潰れてしまいました。
大手塾が少ないところは生徒も少ない
なぜこうなってしまったのかというと、大手塾がないということはそれだけ塾としては成り立ちにくい地域だということと、すでにある個人塾や小学生が通う大手の塾が独占している可能性が高いということです。
ちなみにそのような地域でも優秀な生徒はいるはずだから、その生徒を対象にすれば遠くても都市部の大手塾に通っています。結局ターゲットとなる生徒がいないために立ち行かなくなってしまったのです。
ライバルが多い激戦区こそ小さな塾の需要がある
上記のような理由から、塾を出す地域は大手塾のひしめく激戦区に出すことをおすすめします。少なくとも塾に通う生徒が多く存在していて、塾の需要が高い地域だからです。
その中で、大手塾を真似たミニ大手ではなく、大手塾では手の届かないところをカバーする塾を創り上げるようにしましょう。
そうすれば、大手塾に不満を持っている人たちにとっては救いになる塾になることができます。小さな塾にしかできないニッチな需要は意外と多くあるものです。
罠③周囲と比べて安い月謝にしてしまう
月謝を安くすると生徒が集まるという嘘
塾で起業しようとしている方は周囲の塾と比べて価格面の優位性をつけようとして、月謝を安くしようとします。
もちろん、生徒や保護者のことを考えて、できる限り安くサービスを提供してあげたいという気持ちはよく分かりますし、間違っているとは思いません。しかし、月謝を安くしてしまうことのリスクは知っておく必要があります。
低価格=価値がない塾
「月謝が安すぎるので入塾するのを辞めます」
これは、ある塾で実際にあった話です。問い合わせに来た保護者が月謝を見て言い放ったのがこの言葉です。その塾は授業をしている講師陣もその後はそれぞれが自分の塾を開いて生徒を集めているくらい、実力のある講師ぞろいでした。
安い月謝にエース級の講師が勢ぞろいだったこともあり、その塾は教室が1つだったにも関わらず1年足らずで生徒数が120人を超えるほどに成長しました。
しかし、その後その塾はどうなったかというと、安いという理由で勉強をする気のない生徒が集まり始め、授業中に騒がしい、目の行き届かない後ろの方でゲームをしているなど、評判が下がっていき、それを嫌った真面目な生徒が退塾して、経営が苦しくなっていきました。
後から聞いたのですが、「月謝が安すぎるので入塾するのを辞めます」と言った保護者は、「あそこは安くて先生たちも熱心だから今は良いけど、後から大変なことになる」と言っていたそうです。その予言は当たってしまったわけです。
ちなみにその後、その塾は方針を転換し、高価格な塾に変わりました。教室数・スタッフも増え、今も順調に生徒を集めています。
高くても入りたいと思わせる塾を創ろう
もしあなたが月謝を高くすることに罪悪感のようなものを覚えるのだとしたら、それは自分の塾の価値を低く見積もり過ぎているだけかもしれません。
自分の仕事を学校の勉強を教えるだけ、志望校に合格させるだけ、と考えてしまっているのではないでしょうか。そうではなく、自分の仕事は子どもの将来にとって、もっと有益であると考えることが必要です。
私自身は生徒の生涯年収を引き上げる、将来何かあっても食べていけるだけの基礎能力を身に付けさせるというように考えていますし、実際に話をしています。
考え方はさまざまななので、これが唯一の正解というわけではありませんが、塾という仕事に対して誇りを持つことができるようにしていけば、保護者にとって価値のある塾になっていけるはずです。
せっかく起業するのだから、月謝が高くても入りたくなるような塾を創っていただきたいと思います。
学習塾経営に資格・経験は必要なし!詳細条件で具体的な収支シミュレーションを
資格や経験がなくても開業できる学習塾ですが、開業資金はもちろん必要です。開業に必要な資金を算出し、融資が必要であればその手続きも進めます。開業までのプロセスを踏まえ、収入・支出をシミュレーションし、どの程度の利益を確保できるのか予測しましょう。
シミュレーションを立てるには、立地・資金・希望する事業規模など、オーナーになる方の詳細条件の確認が必要です。まずは、問い合わせ・資料請求を行い、不安・疑問を解消するところから始めてみませんか?
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